フレット交換/ナット交換【最近のギター/ベース・リペア・メンテナンス】2021年6月16日




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今回、お客様からフレット交換のリペアを承りました。

今回のリペアは少々、自分自身に気合いを入れ直して作業しました。



私がフレット交換をする場合は、楽器自体がフレット交換しても大丈夫な状態かを検品して確認してから行います。

楽器自体がフレット交換をしてもいい条件をクリアしているかどうかを確認します。

ということは、中には条件をクリアしていない楽器もあるということです。

まず絶対にクリアしていないといけない条件は、

・ロッドを回す範囲が十分にあって、ネック調整が正常にできる
・ネック自体は変な反り方をしていない

簡単に言うとネック自体が正常な状態であるということです。

ネック自体が正常ではないのに、フレット交換なんかやっても全く意味がないですよね。



これ以外にも

・フレットの残量が十分に残っていて、フレット交換をする必要がない
・お客様が自分でいろいろと規格外の改造をして、フレット交換以前に直さないといけない箇所が多数ある楽器
・〇国製などの安価な楽器

リペア代の金額が、新品の楽器を購入するより高くなる場合も多々あります。

それなら、リペア代を一旦置いておいて、次の楽器を買う時の足しにした方がいいかと。

それに、フレット交換はそれなりに大きなリペアになりますので、多少なり楽器本体にダメージを与えることになります。

金額としても、¥30000~(税抜)と、それなりに高額なものになります。

皆さんならそこまでしてフレット交換しますか!?



まれに、フレットが錆びてボロボロの状態になっているので、フレット交換を依頼されるお客様がいらっしゃいます。

フレットの残量も十分に残ってる状態なら大丈夫です。

安心してください!

フレットを磨き上げて綺麗にすることもできますので!

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ギター/ベース・リペア・メンテナンス/オーバーホール



あと、最近お話したお客様から、

「ネットを見ていたら、フレット交換は早ければ2~3年くらいの周期でした方が良いと書いていたんですけど、このギターはフレット交換した方がいいですか!?」

と、聞かれたことがありました。

いやいや、全然大丈夫ですよ!

安心してください!

実際にフレットの残量もほとんど減ってないですし!

ローポジションはほんの少しだけ減っている部分はありましたが、ハイポジションなんかは全く問題なかったです。

よく弾いている楽器でも、持つ場合は10年以上でも普通に持ちます。
(安物の楽器は1年も持たない場合はありますが…)

無駄な力が入っていない、上手いプレイヤーは、フレットがあまり減りません。

指の力が弱い方(例えば女性の方)もフレットが減りづらいですよね。

逆に、そこそこ弾けるプレイヤーでも、力任せに弾いている場合は、弦とフレットの摩擦が強いため、当然フレットの減り方は早いです。

自分ではよくわからない場合が多いと思いますので、メンテナンスに出すついでとかに、熟練のリペアマンに実際に自分の楽器を見てもらうのが一番早いです!

交換しなくてもいい場合も多々ありますので!

フレット交換のタイミングを話し出すと長くなりそうなので、それはまた別の機会にでも!



ということで、私がフレット交換をする場合は『少なくとも』これくらいの内容は、楽器本体とお客様の事を考えています。

条件を満たしていない楽器のフレット交換は、状況を説明してお客様にそのまま無料でお返しさせていただいています。

もしくは、フレット交換のリペアをお断りさせていただく場合もあります。





逆に、ネックや楽器自体に問題があったのに、それをお客様に伝えずリペアをしてしまうようなお店があるようです。

もちろんリペア代は請求されます。

以前、私の友人がそういったお店にフレット交換を依頼して、

後から

「ロッドが限界近くまで回っていました。」
「現在、ハイポジションにビビる箇所が多数あります。」

と、伝えてもらったという事がありました。

友人からその話を聞いた時は耳を疑いました。

結局、私が最終的な調整をやり直すことになりました。

あまりこういうことを言いたくはありませんが、

・そのお店の営業スタイルがそういったやり方なのか…!?
・もしくはリペアマン本人が楽器の本質を見抜く実力が無いのか…!?

同じリペアマンとして悲しくなります…

どちらにしても、世の中にはそういったお店があり、そういったリペアマンがいるらしいので、注意してください。

その後、私もネットで調べていたら、私と同じようにフレット交換をやり直したリペアマンが多くいることがわかりました。

現在のひどい状態のフレット交換を紹介した上で「私がこんな感じでしっかりとやり直ししました」と書いているサイトもありました。

なかなかわかりやすかったので、私も非常に参考になりました。



ちなみに、あまりよく知らないお店にフレット交換を依頼する場合に、

(少しですが)見抜く対処方法なんですが、

「フレット交換の作業をする前に、ロッドを回す範囲が十分にあって、ネック調整が正常にできるか見てもらえますか!?」
「ネック自体は変な反り方をしていないか見てもらえますか!?」
「もしネックに問題がある場合はフレット交換をキャンセルしたいと思っていますので…」
「その場合、ネックの状態チェックに料金はかかりますか!?」
「ネックに問題が無い場合はもちろんフレット交換をお願いしたいと思っていますので!」

と、聞いてみてください。

もしネックに問題があった場合に、無料で返品してくれるお店やリペアマンはある程度信用してもいいかもしれません。

楽器本体とお客様の事を考えてくれていると思います。

だって、お客様側からすれば自分の大切な楽器を、フレット交換というそれなりに金額のかかるリペアの依頼をしようとしている訳ですから。

(送料がかかる場合はもちろん自分で負担してくださいね)
(送料はお店側の責任ではないですので)







今回お預かりした楽器はフェンダーJAPANのストラトキャスターでした。

いつものようにフレット交換をしてもいい条件をクリアしているかどうかを確認します。

まず初めに、フレットの残量の確認です。

多少の凹凸はあるものの、フレットの残量はまだ残っているので、フレット交換しなくても大丈夫なんですけど…

続いてネックの状態の確認をします。

すると、ロッドが限界まで回っていて、ネックは順ゾリの状態でした。

ハイポジションのビビリもかなり目立ち、その箇所も多数あります。

簡単にわかりやすく言うと、ネックの寿命です。

(ネックを正常な状態に戻すリペアもできますが、それなりにリペア代がかかります)
(それに、ネックに使われているネック材の木取りによっては、数年~数ヶ月、早ければ1ヶ月未満で元の順ゾリの状態に戻ってしまう事が多々あります)

ナットの弦溝も深いため、ナット交換もしなければいけません。

さすがにこのネックの状態では…

その状況をお客様にお伝えしましたが…

「リペアしてください。」

との事。

(えっ、マジで?)
(本当にいいの?)

どうしてもと言うので、リペアさせていただく事になりました。

作業中もず~っと心の中で、

(本当にいいのかな~?)

と、思いながら作業していました。

私のメンタルはブレブレでした。

こういう時って人間は大きなミスをやりがちなので、いつも以上に一つ一つの作業を慎重にしていきます。

そのため「作業途中のあの部分の写真を撮ろう!」と思っていた写真を多々撮り忘れていました…

ま~、それだけ作業に集中していたという事なんですけどね。

ま~、写真を撮り忘れた言い訳ですよ…



ネックの状態が良くないため、最終的なメンテナンスもなかなか大変でした…

最低限度、弾ける状態にしないといけないため、細かい部分の調整がいつも以上に大変だったのは言うまでもありません。

大変でしたが、もちろん手抜きは一切ありません。

やっぱり、できる限り良い状態にしてから、お客様にお渡ししたいですから。







それでは各作業を写真にて見ていきましょう。



まずは作業前のナットとフレットです。

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ナットを慎重に外して、フレットも1本1本慎重に外していきます。
(ナット交換は今後別の機会に記事を書きたいと思います)
(ところで、かなり昔から思っていることなんですが、フェンダー社の楽器って、新品の状態からナット溝が深くて、新品なのにナット交換した方がいい物が多いのですが、そう思っているのは私だけでしょうか…)
(いや、私と同じように思っているリペアマンはきっと全国に沢山いますよね!?)

他のリペアマンの方々はどうなのかはわかりませんが、私の場合はフレットを打ち込む時より、フレットを抜く時の方が何倍も神経を尖らせて作業しています。

フレット交換ナット交換【最近のギターベース・リペア・メンテナンス】20210616 (4).jpg





ナット溝とフレット溝の掃除をして、指板表面を軽く整えて手垢等の汚れも取り除いていきます。

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フレットを打ち込んでいきます。

この時に、打ち込んだフレットを抜けにくくする私なりの方法があるのですが、それはヒミツです!
(別に大したことではないんですけどね)

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指板サイドの余分なフレットをカットして、フレットサイドの仕上げを1本1本丁寧にしていきます。

この時に、指板表面やネック部分にしかっりとマスキングテープを貼って、ヤスリ等の傷が付かないように保護します。
(マスキングテープを貼ってる写真撮るの忘れてました…)

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フレット交換ナット交換【最近のギターベース・リペア・メンテナンス】20210616 (11).jpg





新しいナットも完成して、フレットの仕上げも完了したところです。
(光の反射具合でナットもフレットも、なんか写真が見づらいですね…)
(実際は写真以上に丁寧に仕上げていますので)

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ところで、フレットサイドの仕上げ方についてですが、私の場合は、基本は昔からある定番の仕上げ方にしています。

フレットサイドを斜めに少し削り落として、仕上げにサイドのエッジのバリの部分を軽く削る仕上げ方です。

私の場合はさらに、サイドの仕上げを丸みのある感じの形状に加工しています。

最近は高級楽器などは、流行りなのか、フレットサイドを斜めに削らず、残した状態で丸く加工しているフレットをよく見かけます。
(写真がなくてスイマセン…)

以前、知り合いのギターをにこれに近い感じでフレット交換をした事があるのですが、

「何か、フレットサイドが指に当たる感じなんで、いつものように削っちゃってください!」

と、言われ、結局いつも通りの状態にフレットを削って仕上げました。

というわけで、現在の私のフレットの仕上げは、昔からある定番の方法と、最近の流行りの方法の、両者のいいとこどりといった感じです。

どの方法が良いのかは、結局正解は無いんですよ。

リペアマンそれぞれに考えがあるので、今後フレット交換を依頼する場合は、そのリペアマンさんの方法でお任せする方が一番オススメです。

なぜなら、熟練のリペアマンは上記のような様々な方法を試した上で、自分のやり方を確立させていますので。







最後に各部分の作業前と作業中と作業後の写真の見比べになります。



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